サンメイトの実証試験

高知大学農学部様において、2005年と2012年にサンメイトの効果実証試験を行っていただきました。
高知大学農学部 2005年 学会発表資料

農業環境工学関連7学会2005年合同大会
GS84-2

海洋深層水の施用条件がNFT4段摘心栽培トマトの果実品質、収量に及ぼす影響

松岡孝尚・ 藤倉大介・北野雅治・石川勝美(高知大学農学部)

1. 緒言
トマトの水耕栽培において、海洋深層水を培養液の一部として利用することにより、ミネラル成分を多く含んだ高品質トマトを生産できることが知られている。しかし、これまでの研究では、果房間の果実品質のばらつきや、尻腐れ果の多発などが問題となっている。そこで、本研究では4段摘心栽培での深層水の施用法を検討するため、慣行の水耕培養液と深層水培養液の交互給液とし、それぞれの給液期間を変えた栽培条件で品質と収量および果房間の品質について調査した。また、 収量を減少させる原因の一つである尻腐れ果の発生抑制を目的に、培養液の溶存酸素量を増加させることによる抑制効果を調査した。

2. 材料および方法
実験には、トマトの品種ハウス桃太郎(Lycopersicon esculentum Mill. cv. House Momotaro)を用い、春夏栽培は2004年3月22日に4つのNFT栽培ベッド(ベッド長10m、ベッド幅0.36m、勾配1/100)にベッド当り47株を定植 した。秋冬栽培は2004年10月13日に春夏栽培と同様に定植した。施用した培養液は、慣行培養液(大塚SC処方 EC1dSm⁻¹)と、 これに海洋深層水濃縮廃液を添加した深層水培養液(EC10dSm⁻¹)である。春夏栽培の試験区は以下の4試験区とした。すなわち、①2W1W区:深層水培養液を2週間施用後、慣行培養液を1週間施用を繰返す、②1W1W 区:深層水培養液と慣行培養液を1週間ずつ交互に施用する、③連続区:連続して深層水培養液を施用する、④連続+0₂区:連続区と同様の養液条件で、溶存酸素量を高める、である。深層水培養液施用開始は各試験区とも第2果房着果後6日目である。秋冬栽培の試験区は春夏栽培のデータをもとに2W1W区、連続区および連続+0₂区の3試験区を設けた。深層水培養液施用時期は各試験区とも第1果房着果後12日目である。調査項目については、春夏栽培では糖度、酸度、果皮硬度、果実硬度、色、乾物率、果実密度、尻腐れ果発生率、 収量を調査し、秋冬栽培では春夏栽培の調査項目に果実内無機成分(Ca,K,Mg,Na)を加えた、9項目を調査した。

3. 結果および考察
春夏栽培で深層水処理の影響が生じていると考えられる第2果房から第4果房において平均糖度(Brix)は1W1W 区で6.5~7.5%、2W1W 区で7.3~8.4%および連続区で 9.5~9.9%の範囲となり、平均新鮮重は1W1W 区で 81~92g、2W1W 区で 70~84g および連続区で51~58gの範囲となり(表1)、収量は1W1W、2W1W 区ともに連続区の約1.5倍の収量であった。これらの結果から、4段摘心栽培において交互給液を行うことにより果房間の果実品質のばらつきを少なくすることができることが分かった。また、試験区間の比較では、果実糖度を高くすれば収量は減少することを示しており、両者は逆比例の関係にあると言える。また、酸素施用による尻腐れ果発生抑制への効果について、春夏栽培において、連続+0₂区が連続区に比べて、 発生率が約1/3程度に減少した。また、図1に示すように、秋冬栽培において着果後の果実内Ca濃度の変化は、連続+0₂区が連続区を上回る結果となった。尻腐れ果発生の原因には着果時のCa 不足にあるとの報告があり、本実験結果はこの報告と一致 していることから、酸素施用は、根による養分吸収を促進する働きがあり、尻腐れ果発生抑制に効果があると考えられる。

表1 春夏栽培における深層水培養液、酸素施用が果実品質、尻腐れ果発生率に及ぼす影響

高知大学農学部 2012年 プレゼン資料
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
高知大学農学部 2012年 論文資料

トマトのロック ウール栽培における酸素富化培養液の効果

高知大学農学部 ○西村安代・東愛華・福元康文

緒言:
養液栽培では根圏への酸素供給はとても重要である。 特に高温期には、培養液温の上昇による溶存酸素の減少や、根の呼吸量の増加により根圏での酸素不足による、成育不良や生理障害が誘発される。そのため培養液への酸素供給が行われることがある。しかし、一般的には培地を用いない DFT 栽培などでの事例が多く、ロックウール栽培では酸素富化処理をした培養液の効果についての報告はほとんどない。そこで本研究では2種類のロックウール培地を用い酸素不足に敏感なトマトを供試し、酸素富化培養液の効果について検討した。

材料および方法:
トマト‘桃太郎ファイト’を供試し、2011年2月1日に2種類のロックウール培地(A:高炉スラグを主原料・日本ロックウール製, B:玄武岩を主原料・ グロダン製)のバッグカルチャーに1バッグ4株ずつ定植した。処理区は、上記の培地2種類と培養液への酸素富化の有無をそれぞれ組み合わせた4処理区を設け、1処理区6バッグとした。酸素富化処理は水中酸素供給装置『サンメイト』((株)グリーンテック)を用いた。栽培は、主枝一本仕立て5段採りとし、果実収量と尻腐れ果の発生数、奇数果房の品質を調査し、果実と植物体の一部は乾燥させた後、乾物重の測定と無機分析に供した。また週に1度、培地からの廃液を採取し、 EC, pH, 硝酸イオン濃度と無機成分を測定した。

結果および考察:
培養液を酸素富化処理することで両培地ともに収量が増加し、また1果実の平均重量も増加した。
特に酸素富化区のB培地において総収量が他の処理よりも有意に高くなった(第1図)。 さらに尻腐れ果発生率は酸素富化区で減少が認められた(第2図)。果実品質については、第1果房では酸素富化区で糖度と酸度、果実乾物率が無処理区よりも有意に低下したが、第3.5果房においては処理による一定の傾向は認められなかった。また果皮色、アスコルビン酸、グルタミン酸についても処理による影響は認められなかった。試験終了時の第 1・3・5 果房直上葉の生体重・乾物重に有意差は認められなかったが、茎全体の生体重は酸素富化区で有意に増加した。無機分析について、Ca含有率は果実内では処理による差異は認められなかったが、奇数果房の直上葉内では酸素富化区で酸素無処理区よりも減少した(第3図)。 廃液のpHは 4処理区ともほぼ同じような推移を示したが、EC, NO3, P, Ca, Mn, Cu 濃度は培地Aで試験中頃にB培地より高かった。
以上より、培養液の酸素富化処理は尻腐れ果の発生を減少させ、果実肥大を促進することから増収効果があることが判明し、培地の使用が長期にわたる場合は培地の劣化に酸素不足が招来しやすいと考えられ、なおさらその効果が期待できる。第1果房で実肥大したものの乾物率は低下したことから、酸素供給により養水分の吸収が向上ものと推察された。また、培地によっても尻腐れ果の発生に差が見られたことから、 の化学組成や物理性が関与していると考えられた。今後は、他の作物での効果や、より効果的な施与方法についても検討する必要がある。

謝辞:
本研究の一部は「気候変動適応研究推進プログラム」(RECCA)の助成を受けて実施した。また、酸素供給装置を(株)グリーンテックより提供いただいた。期して感謝を表します。